2025/08/17
8/17巻頭言「『ファースト・こっからここまで』―そんな基準は一瞬にして変わる」その
「日本人ファースト」。この言葉が人々の心を掴んだ。米国では「アメリカファースト」を唱える大統領が現れ、ヨーロッパでも「自国・自国民ファースト」を唱える極右政党が台頭している。
なぜ「ファースト」に人の心はなびいたのか。それは「自分は承認されていない」「大事にされていない」と感じていた人が多かったからだと思う。これまでの政治や経済がぞんざいに扱ってきた人々にこのような感情が生まれるのは当然の結果だと言える。特に就職氷河期以降の人々にとってその思いは強い。
しかし、その「思い(不満)」が「ファースト」を唱える人々によって解消されるとも思えない。そもそも「ファースト(第一)」と言えば「二の次、三の次」が現れる。まさに「二の次、三の次」に置かれた人が「ファースト」と呼びかけられ「安心」したとするならば、今度は誰かがあなたの「二の次、三の次」に貶められることになる。その悲しみを一番知っているのは、これまで「悲しく、さびしい」思いをしていた人たちだと思う。
それ以上に問題なのは、「ファースト」が強調されると同時に「敵」が想定されたということだ。もはや「二の次、三の次」どころではない。「日本人の生活が苦しいのは、外国人のせいだ」との説明が繰り返された。当初は手取りや消費税が焦点とされていた選挙だったが、いつの間にか外国人問題にシフトした。「外国人」に関わる事を公約に掲げたのは参政党、自民党、国民民主党など複数に及ぶ。
人心を操るには第一に「問題を極端に単純化すること」であり、この典型が「敵と味方をつくる」ことである。人々の欲望や不満を「敵のせいだ」として攻撃をする。大衆は一気にそれに「不満のはけ口」を向ける。このような現象をポピュリズムと呼ぶ。それは単なる「大衆迎合」と言うことではなく扇動的で差別的、排外主義と結びつく危険な動きだ。どこにも自分の居場所を見出せないと感じている人に「あいつらが悪いからあなたたちが苦しいのだ。あいつらこそ私たちの共通の敵だ。団結して戦おう」と煽る。今回の「ファースト」の盛り上がりにそのような空気を感じた。
ネットには敵愾心を煽るデマが流された。「生活保護受給世帯の3分の1は外国人」とのデマ情報が飛び交う。厚生労働省が2025年3月に公開したデータ(「令和5年度被保護者調査」結果概要データ)によると、2023年7月末時点で生活保護受給世帯数は165万478世帯。そのうち外国籍の世帯数は4万7317世帯。割合でいえば約2.9%に留まっている。「3分の1が外国人」は明確なデマである。(nippon.com「外国籍世帯の生活保護」2025年7月9日)。