2026/03/08
3/8巻頭言「家族機能の社会化 “助けて”といえる街へ 最終回」
(先日NHK総合の『視点・論点』に出演した。これはその時の原稿)
令和3年の国土交通省の調べでは高齢者世帯に対して七割の大家さんが入居に拒否感を持っていることが解っています。理由は死後事務を担う身内がいないからです。
ですから抱樸の活動は問題解決を目指す「自立支援」にとどまらず「出会いから看取りまで」の伴走型支援が中心となりました。
十数年前、抱樸では誰でも参加できる「地域互助会」をつくり「家族機能の社会化」を模索してきました。会費は月額500円。日常的なサロン活動、長寿の祝い、交流会、出番提供のボランティア活動、バス旅行、ニュース発行、個別訪問、病院や施設へのお見舞いなどを相互に担います。特に特徴的であるのが「互助会葬」、つまり、お葬式です。お葬式は通常身内の役割です。しかし先に示した通りお葬式をする人がいないとアパート入居も困難になる。これが現実です。だから赤の他人がお葬儀をする仕組みを地域で創りました。「地域互助会」は、葬儀のみならず、退去後のアパートの掃除なども担います。すでに230人以上の葬儀をし、毎年追悼集会も行われます。結果、大家さんの入居拒否はなくなりました。
「家族になろう」と言われると正直ハードルが高い。しかし、「なんちゃって家族」で十分です。従来の家族は少数精鋭で責任も重い。それでつぶれてしまうこともあります。
「なんちゃって家族」は質より量です。お父さんが30人いてもいいし、おばあちゃんが50人いてもいい。多い方が良い。それが地域で行う意味です。互助会葬の後の火葬場での様子は、一見家族に見えますが、全員が赤の他人です。
今、「家族機能の社会化」を核としたまちづくりに取り組んでいます。北九州市には特定指定危険暴力団工藤会という組織があり、長年、市民生活、経済活動に大きな被害を及ぼしてきました。この間、官民が一体となり壊滅作戦がなされ大きな成果を得ました。2019年秋、本部事務所が解体撤去されたことを機にNPO法人抱樸では跡地を引き受けることにしました。「恐いまち」といわれた北九州市を「希望のまち」に変えるプロジェクトです。その後、コロナ禍、資材高騰など、計画は困難を極めましたが本年一月からようやく着工にこぎ着けました。
一階には大ホールを創ります。大きな「居間」、あるいは「囲炉裏端」です。「施設」ではなく「まち」。困ったら来るだけではなく、日ごろから居場所として集い、何気ない日常を過ごす。支援員がお世話するのではなく、各々が主役としてそこに居る。そして「気づきとつなぎ」を担う。それが「希望のまち」です。つなぎ先としての相談機能も当然あります。二階三階は、独り暮らしが難しい困窮者のための全室個室型の「救護施設」となっています。北九州市は、全国平均を上回り単身世帯が40〇%を超えている課題先進都市です。抱樸はこの夏に北九州市と連携協定を結びました。単身化に向かう時代に、一つの実験的な取り組みとして「希望のまちプロジェクト」を進めていきたいと思います。今年の秋にはオープンする予定です。どうぞ、遊びに来てください。
おわり