6/8巻頭言「信じ、弱く、愛し、近づく―この時代を生きるための信仰的課題」その③
(これは2025年度計画総会の日に為された宣教を補足修正したものです。その③)
②弱さを誇る
第二は「弱さを誇る」ということ。強い立場の人が弱い立場に置かれた人に無理難題を押し付ける。そんな場面を最近よく見かける。「お前にはカードがない。俺の言うことを聞け」と迫る大国のリーダーの言動に世界が振り回されている。強者が他国のことを決めていく。その根底にあるものは「自国第一主義」、つまり「自分だけ良ければいい」という考えである。「わがまま」を押し付けられた弱い立場の者は従わざるを得ない。これは大変けしからんことだ。本来、主権国家というものは国の大小にかかわらず平等であるはずだ。
「無理が通れば道理が引っ込む」。「道理」に反する行為がまかり通ると正しいことが行われなくなるという意味。「無理」がまかり通ると弱い立場に置かれた者たちは諦念にかられるか、絶望するしかなくなる。あるいは「自分も強くなければ生きていけない」と思うか「ともかく強い人についていけば良い」と思考停止に追い込まれる。
「弱肉強食」という言葉がある。強い者が弱い者を餌食にして生き残るという意味である。しかし、それは歴史的事実ではない。もしそれが事実ならば、この教会の周囲にライオンがうろうろしていても不思議ではない。ライオンは百獣の王だからだ。しかし現実はどうか。ライオンは現在絶滅危惧種Ⅱ類に指定されている。一方でライオンの餌食にされてきたウサギは全世界で繁殖している。
人類も同様で現在の人類はおよそ50万年前に登場したとされる。我々の祖先はホモサピエンスと呼ばれたが、同時期ネアンデルタール人という種族も存在した。ネアンデルタール人は、ホモサピエンスに比べ体格が良く強靭であったと言われている。しかし、そのネアンデルタール人は絶滅し、ホモサピエンスが生き残った。原因については諸説あるが、その一つが強靭なネアンデルタール人は家族程度の集団しか創らなかったことにあるそうだ。ネアンデルタール人は強かった故、他に頼ることをせず孤立していた。一方、我々ホモサピエンスは脆弱であったゆえに家族を超える集団を作り、助け合うことで生き延びたと言われている。ならば「弱肉強食」ではなく「弱者共存」が歴史的事実だと言える。強ければ助け合うことも仲間を創る必要もないかも知れない。しかし人間は弱い。あの大統領も同じはず。だから最後は助け合うしかなくなる。もし、そうならなければ人類は大きな悲劇に見舞われることになる。そのことはネアンデルタール人が実証済みである。
つづく