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2021/10/24

10/24巻頭言「あれから三年―松ちゃん、会いたいよ その㉗」

  
その番組とは、2019年3月10日午後10時から放送されたNHK総合「プロフェッショナル仕事の流儀(第112回)―絆が、人を生かすから・ホームレス支援奥田知志」である。すでに述べたように松ちゃんの担当ディレクターの座間味さん自らが拘置所の松ちゃんを訪ね本人の了解の下に取材が進められ。刑務所から出てきたところから始まり、その後の数日間をカメラが捉えた。松ちゃんは、それを引き受けたのだ。
一カ月以上に及ぶ取材を元に編集された番組は放送と共に大きな反響を呼んだ。それまで「プロフェッショナル仕事の流儀」と言えば天才外科医など「プロフェッショナル」と呼ばれるに相応しい方々が出演されていた。しかし、今回はまさかの私。大変申し訳ない思いだったが「ホームレス支援」や「困窮者支援」という事柄があのような人気番組で取り上げられたことは無く、その点でもこの番組は大きな意味を持っていた。放送後、厚労省に行くと当時の担当課長から「あの番組の録画を職員に見るように指示しています」と言われた。厚労省の廊下を歩いていると知らない職員から声をかけられるようにもなった。この番組が及ぼした影響は計り知れない。
自分が出ているのでなかなか言い難いのだが、僕はとても良い番組だったと感謝している。すでに述べたが、放送後、道を歩いていると見知らぬ人から「松ちゃん元気ですか」と声をかけられることがあり視聴者の心を打ったことが分かった。なぜ、あの番組は人々に感動を与えたのか。僕は、その要因は松ちゃんにあると思っていた。松ちゃんが本名で、しかも顔出しで取材に応じたことが見ていた人々が「ホームレス支援」という「一見遠い世界の出来事」と思えるような事柄を身近に感じさせたのだと思う。番組には他の方もホームレス当事者も数名登場されるが全員顔にはモザイクがかけられていた。現在も続くホームレスへの攻撃や差別、困窮者や生活保護受給者に対するバッシングなどの現実を考えると「顔を隠さざるを得ない」と判断せざるを得ないのもわかる。悔しいが。
しかし、松ちゃんは番組の中ですべてをさらけ出していた。ホームレスに対する偏見のみならず、松ちゃんの場合服役したこともそのまま収録されており、出所が登場シーンというのも正直ドキドキした。今日の社会において最も厳しい偏見が向けられるこれらの事実を松ちゃんは隠すことなく取材を受けたのだ。顔出し、名前出しは勇気がいったと思う。しかし、そのおかげで視聴者は身近に感じ感動した。官僚たちも困窮者支援の現場のこと、そのしんどさと豊かさを知ることができた。番組は大きなインパクトを世間に与えたのだ。

つづくその番組とは、2019年3月10日午後10時から放送されたNHK総合「プロフェッショナル仕事の流儀(第112回)―絆が、人を生かすから・ホームレス支援奥田知志」である。すでに述べたように担当ディレクターの座間味さん自ら拘置所の松ちゃんを訪ね、本人の了承を得て取材された作品である。刑務所出所から始まり、その後の数日間カメラを回ことを松ちゃんは引き受けたのだ。
一カ月以上に及ぶ取材を元に編集された番組は大きな反響を呼んだ。それまで「プロフェッショナル仕事の流儀」と言えば天才外科医など「プロフェッショナル」と呼ばれるに相応しい方々が出演されていた。しかし、今回はまさかの私である。大変申し訳ない思いで一杯だったが「ホームレス支援」や「困窮者支援」があのような人気番組で取り上げられたことは無く、その点でもこの番組は大きな意味を持っていた。放送後、厚労省に行くと当時の担当課長さんから「あの番組の録画を職員に見るように指示しています」と言われた。厚労省の廊下を歩いていると知らない職員から「見ました」と声をかけられることもあった。この番組が様々な方面に及ぼした影響は計り知れない。
自分が出ているので言い難いのだが、僕はとても良い番組だった思っている。すでに述べたが、放送後、道を歩いていると見知らぬ人から「松ちゃん元気ですか」と声をかけられるほどで、見た人の心を打ったことは間違いない。なぜ、あの番組は人々に感動を与えたのか。その要因は松ちゃんにあると僕は考えていた。松ちゃんが本名で、しかも顔出しで取材に応じたこと。これは大きかった。「遠い世界の出来事」と思われがちな「ホームレス」というテーマを身近に感じさせたのは松ちゃんの存在だったのだ。番組には他のホームレス当事者も数名登場されているが全員モザイクがかけられていた。現在も続くホームレスへの攻撃や差別、困窮者や生活保護受給者に対するバッシングなどの現実を考えると「顔を隠す」と判断せざるを得なかったのだ。悔しいが、それが現実なのだ。
しかし、松ちゃんはすべてをさらけ出していた。松ちゃんの場合、ホームレスへの偏見のみならず、「服役者」つまり「犯罪者」への偏見も重なる。にもかかわらず、すべては「そのまま」収録された。松ちゃんが初めて登場するシーンは「拘置所前」であり、知っている私までもがドキドキしながら見ていた。今日の社会において最も厳しい偏見や差別が向けられる「これらの事実」を松ちゃんは隠すことなく取材に応じた。それは勇気のいることだった。この松ちゃんの勇気ある決断のおかげで番組は成立し、視聴者は現場を身近に感じ感動したのだ。官僚たちも困窮者支援の現場のこと、そのしんどさや豊かさを知ることができた。そのようにあの番組は大きなインパクトを世間に与えたのだ。

つづく

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