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2020/09/20

9/20巻頭言「自立は、つながりの中で―「學鐙」秋号 その②

もう一つは「社会的な要因」。確かに彼は、アパートに入居し自立した。ように見えた。当時、「住宅と仕事(生活保護)の確保」が自立の課題と考えていた私達は、大切なことを見落としていた。それは「孤立」である。人はいつ掃除をするのか。あるいは、なぜ掃除をするのか。衛生上の問題であることは言うまでもないが、それだけではない。恥ずかしながら私など、誰かが訪ねて来ないと真剣に掃除をしない。「他者の存在」が行動の動機となる。入居後、誰も訪ねて来ない日々の中で、掃除をする動機は生まれなかった。それどころか、長く野宿を生きた彼にとって、ゴミ屋敷の方が慣れていたのかも知れない。自立とは、自分の在り方を変化させることである。そのことに欠かせないのが「他者」の存在であることを痛感した。
ホームレス自立支援において、入居支援後アパートを訪ねる。風呂にも入り、料理などする姿は隔世の感がある。「また、来ます」と振り返ると部屋の中でひとりたたずむ姿がある。それは路上の時と変わらない。何が解決し何が解決していないのか。路上では「畳の上で死にたい」と言っていた方が入居後、「俺の最期は誰が看取ってくれるだろうか」と問う。この「誰が」という問いに答えが無いならば、自立は孤立に終わる。私達は、「この人には何が必要か」と共に「この人には誰が必要か」を問い続けてきた。
そんな出来事を重ね、抱樸が行う自立支援においては「経済的困窮」と「社会的孤立」という二つの視点が重要となった。前者を「ハウスレス」、後者を「ホームレス」と呼ぶ。ハウスとホームは違う。「自立」において、この両者が成立することが重要であった。
3、自立とは物語を生きること
この二つの貧困は相互に連鎖しつつ拡大している。第一の連鎖は、「経済的困窮が社会的孤立を生む」いわば「金の切れ目が縁の切れ目」という状態。
北九州市の全世帯の高校進学率が97.3%であるのに対して、生活保護受給世帯では、86.4%と10ポイント以上落ちる。経済的困窮が進学という社会参加を狭めている。さらに、国税庁の「民間給与実態統計調査(2012年)と労働政策研究・研修機構「若年者の就業状況・キャリア・職業能力開発の現状」(2009年)を見ると正規雇用男性の平均年収は521万円に対して、非正規雇用の平均年収は226万円。そして、この格差がそのまま結婚に影響する。正規雇用の30歳男性の既婚率57.1%に対して非正規雇用の既婚率は24.9%。経済的困窮状況が結婚を難しくしている。経済的困窮が社会的孤立を深めている。    続く

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