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2023/12/03

12/3「年金と持ち家、そしてホーム」

 コロナ禍は潜在的な問題を明らかにした。「家賃」はその中でも大変な問題だった。コロナ禍で収入が減った。食費は調整が効くが「家賃」はそうはいかなかった。収入と家賃のバランスの問題はかねてから指摘されていた。収入に比べて家賃が高い人が多数いる。
 現在の国民年金の平均受給額は約5万6千円、満額だと6万5千。厚生年金では平均的な収入のサラリーマン夫婦の場合、月額22万1,504円(2019年調べ)。単身者はこの半分。いずれも家賃が相当な比重となる。国民年金のみの世帯は特にそうなる。
 それにしても国民年金はなぜこんなにも低いのか。しばしば国民年金と生活保護が比べられ議論になる。地域によるが生活保護は家賃込みで11万円程度(単身)。国民年金の約2倍。「不公平」を感じる人も少なくない。
 しかし両制度はそもそも土台が違う。それは「資産の有無」だ。生活保護は持っている資産を用いてもなお最低生活を維持できない人が利用できる。年金の場合、資産は問われない。実際に年金と預金を組み合わせて暮らす人は少なくない。何よりも大きな違いは「持ち家」。生活保護受給は持ち家処分が原則となる。
 実は年金の前提は「持ち家」だった。「戦争中に多くの家が焼け、終戦直後には約420万戸の住宅が不足しました。さらには戦後のベビーブームと、農村から都市への人口移動で、世界でもまれに見る大きな住宅需要が生まれました。(中略)政府は、人々の『持ち家』取得を促しました。国の財政だけではとても住宅需要に対応できず、国民の家計や民間資金を動員して家を増やしたのです」と神戸大の平山教授は指摘する(朝日新聞2021年12月)。さらにこの「持ち家政策」の意味は「『家族・中間層・持ち家』が重んじられてきました。経済が成長する時代、人々は借家から持ち家へ、という住まいの『はしご』を登りました。雇用と収入を安定させ、家族をもち、家を建てるのがゴール。持ち家へ向かう中間層が膨らむことで、社会が安定すると考えられました」(上記平山)ということである。これが進み「持ち家がある」ことが前提となり「年金に家賃は含まれない」という考え方に落ち着いた。
 だがこの「前提(理屈)」は崩壊した。持ち家率は低下し終身雇用なども崩れつつあり、住宅ローンを組むことが出来る若者は減った。持ち家、定住というライフスタイルは変化した。
 しかし「家がないと年金だけでは生活できない」これが現実である。しかし、逆にいうと「住まいさえ何とかなれば年金で暮らせる」ということでもある。「住まい」を社会保障と考える時が来ている。単身世帯が四割に達し2030年には単身高齢世帯が800万世帯となる。一方空き家は800万戸。これを上手く活用するしかない。
 従来「住まい」の中には暮らしや人とのつながりが含まれる。ハウス(建物)に終わらせずホーム(つながり)と呼べるものを創造する。自宅(ハウス)では一人ぼっちだが、そこに住むと誰かとつながることが出来る。孤独、孤立の中でつながり(サードプレイス)を含む新しい社会保障の仕組みが求められている。

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